1.建設キャリアアップシステム(CCUS)創設の背景
建設業者に求められる役割
現在の建設業者に求められている役割は大きく二つほどあります。一つは地域インフラの維持・整備、もう一つは自然災害の応急対応です。埼玉県八潮市の道路陥没事故のようなインフラの老朽化による事故や令和元年の台風19号のような大きな自然災害が今後どんどんと増えていく見通しです。それらの対応をすることは、国民の生命・財産の保護に大きく関わります。
建設業における就業者数の現状
そういった大きな役割が求められているにも係わらず、残念ながら建設技能者の就業者数は著しく減っていっています。55歳以上が全体の3割、29歳以下が全体の1割というように、高齢技能者が増え、若い就業者が減り続けています。それによって、我が国の基幹産業である建設産業が弱体化していき、社会から求められる役割が果たせない状況に陥る恐れがあります。
若年建設技能者減少の要因
若い建設技能者が減少している要因は大きく二つと言われています。一つは少ない賃金、もう一つが労働時間(長時間労働と少ない休日日数)と言われており、この二つの要因を解消すべきとされています。

CCUSで建設業を魅力ある産業に!
従来の建設産業に対するイメージ・実態である3K(きつい・汚い・危険)を一新し、新3K(給与・休暇・希望)を創出すべく、国として様々な取り組みをしています。その一丁目一番地が建設キャリアアップシステム(CCUS:Construction Career Up System)です。
2.建設キャリアアップシステム(CCUS)とは
CCUSの目的
国が推進するCCUSの目的は、建設技能者の「処遇改善」と建設会社の「生産性の向上」です。

建設技能者の「処遇改善」
建設技能者個人が、実務経歴や資格など、様々な評価できる情報をウェブ上で入力し登録申請をします。登録することにより、技能者個人の情報が可視化され、個人の持っている施工能力が評価されるようになります。これまで全く評価されていなかった技術や経験のある技能者さんが、役所や元請から適正な評価を受けるようになります。その評価に伴い、賃金が上昇していく産業にすることを目標にしています。建設会社についても、レベルの高い技能者がたくさん在籍している事が、会社として高く評価される基準になるため、より多くの民間工事の獲得を期待できたり、経営事項審査でも多くの項目で加点になるため、より多くの公共工事を獲得できることが期待できます。
建設会社の「生産性の向上」
現在、建設就業者の皆さまは、多くの書類関係を発注者に提出していると思います。施工体制台帳、作業員名簿、週休二日達成状況など、休日目標を達成しているか否かの情報のために、労働時間の一部を提供しているような、相反した実態があると思います。それらの書類関係の確認・提出が長時間労働を創り出し、また生産性を低くしている側面があると思います。それらの紙で確認・提出することを一切やめて、ウェブ上に必要な現場についての情報を入力して見にいけるような環境を創り出そうということになりました。また、一度入力した情報は二度入力する必要がなくなり、今までエクセルなどにコピー貼付けや手打ち入力していたものを、ボタン一つで設定できるようにしていこうということになりました。これにより労働時間が削減し、生産性の向上につながることが期待できます。
3.建設キャリアアップシステム(CCUS)登録
事前登録
CCUSを運用する前に、まずは事前登録が必要になります。建設会社の登録、技能者個人の登録と二種類の事前登録があります。基本的にはインターネット申請になります。
事業者登録
所在地や建設業許可番号などの必要情報を入力し、登記事項証明書などの必要書類を添付して申請をします。相当期間経過後、事業者IDと管理者IDが発行されます。有効期間は5年間で、更新申請が必要になります。
技能者登録
社会保険情報や保有資格などの必要情報を入力し、運転免許証などの必要書類を添付して申請をします。相当期間経過後、技能者IDとカードが発行されます。事業者登録と同様に更新申請が必要ですが、技能者登録の場合の有効期間は10年間になります。
関連付け
技能者登録で所属事業者情報に事業者IDを入力すると、その事業者の所属技能者として関連付けされます。この関連付けは非常に重要になります。現場運用の時に関連付けが行われていない場合、いくら検索をかけても所属技能者が出てこないことになってしまいます。

4.建設キャリアアップシステム(CCUS)現場運用
現場運用(登録)
事前登録が完了したら、いよいよ現場でCCUSを使えるようになります。CCUSを現場で使うことを現場運用と言います。現場運用には大きく三つの登録が必要になります。
現場登録(元請が登録する)
CCUSを運用する工事が決まったら、元請事業者は各現場毎に「現場・契約情報」を登録します。それを一般的には現場登録と言います。登録すると現場IDが発行されます。
施工体制登録(元請と下請が登録する)
元請事業者が「現場・契約情報」を登録した後、元請事業者と下請事業者は協力して施工体制情報を登録します。元請事業者が施工体制の承認要請をすることで、下請事業者に対して通知が行われます。その通知を確認した下請事業者が承認要請内容を確認して承認を行います。2次下請事業者がいる場合、1次と2次で同様の作業を行います。なお、CCUS未登録事業者についても事業者名だけを登録するようになります。
施工体制技能者登録(主に下請が登録する)
施工体制に登録した事業者は(作業員名簿に)次に技能者を登録します。登録の際に、就業内容(職種や立場など)を追加登録します。

現場運用(就業履歴蓄積)
現場運用をするための三つの登録が完了したら、現場でのカードタッチなどにより、所属技能者の就業履歴が蓄積できるようになります。
現場で用意する機器類(元請が用意する)
現場に設置する機器類(パソコンやカードリーダー等)やインターネット環境は元請事業者が準備します。就業履歴を蓄積するための就業履歴登録アプリ(建レコ)を事前にインストールします。
就業履歴蓄積(現場に入退場する技能者がそれぞれ実施する)
元請が用意したカードリーダーに、現場に入退場する技能者がカードタッチをします。カードリーダー以外の就業履歴蓄積方法もいくつかあります。

5.能力評価申請(レベル判定申請)
就業履歴を一定以上蓄積して、所定の資格を保有していると、カードのレベルを上げることができます。最初はレベル1(白)のカードからはじまり、レベル4(ゴールド)が最高になります。このレベルに応じて各技能者の処遇改善をしてこうということで、このCCUSを国が推進しています。能力評価申請の申請先は評価分野によって異なります。評価分野を取り扱う各能力評価実施団体に申請します。令和7年より技能者登録と能力評価申請の同時申請もできるようになりました。また、過去の経歴を使った能力評価申請が令和11年3月までと期限があるので、期限が切れる前の能力評価申請をお勧めしています。


6.現場の効率化
CCUSに入力した情報を基を各現場をペーパーレス化、DX化していくことで生産性を向上させることもCCUSの目的の一つです。
帳票出力
施工体制台帳、作業員名簿などの帳票がCCUSからエクセルデータで出力することができます。

発注者支援機能
公共発注者が上記の帳票をダウンロードすることができるようになる機能です。
建設業退職金共済電子申請化とCCUSとの連携
建退共とCCUSを連携することにより、これまで証紙を貼っていたものがポイントに置き換わり、カードタッチにより建退共ポイントが蓄積できるようになります。
7.CCUSによる各種手続きへの影響
CCUSを実施することによって、様々なメリットや注意点が発生します。
建設業許可
CCUSを実施している工事であれば(他に条件が7つあります)、一定金額以下の工事であれば監理技術者が2つまで現場を持てるようになりました。同様に営業所技術者も1つまで現場を持てるようになりました。具体的な条件等については、建設業許可のページをご確認ください。
経営事項審査
CCUSを実施することにより、ZとWで加点になります。具体的な条件等については、経営事項審査のページをご確認ください。
外国人材の受入れ
特定技能2号の在留資格を得るには、CCUSレベル3以上の班長経験が必要です。施工体制技能者登録の時に、班長の立場を登録してから就業履歴を蓄積しないと、客観的に証明できないことになってしまうので十分ご注意ください。